この記事で使用したPowerPointスライドは「note」にてダウンロード可能です。PowerPointスライドやWordプリントのダウンロードは記事の最後に貼ってあるURLから！それではスタンダード世界史探究をどうぞ！
はじめに
前回はこのような内容でした。
今回は宋の文化②として「宗教」と「技術」についてみていきます。宋の宗教や技術発展は周辺諸国にどんな影響を与えたんでしょうか？
それでは一緒にみていきましょう！
MQ：宋代の宗教や技術発展は周辺諸国にどんな影響を与えたのか？
今回の時代はここ！
※宋代＝北宋、南宋
宗教
宋代に士大夫たちによって、それまでの古文の解釈から離れて、宋学のような哲学的な思想に至った経緯には、仏教と道教の影響があったんです。
禅宗
仏教では、中国で独自に発展した禅宗が宋学に影響を与えました。
禅宗は唐の時代に誕生して、経典を学ぶよりも瞑想（修行）することによって解脱を目指す宗派でしたね。
創始者は達磨、いわゆるダルマさんで、拳法で有名な少林寺などが禅宗のお寺として有名ですね。
なので禅宗は瞑想することで自分の内面と厳しく向き合うことが必要だったので、この考え方が宋代の知識人だった士大夫たちに受け入れられて、宋学の発展に貢献したということなんです。
士大夫に受け入れられて発展した禅宗の発展は、海を渡って日本にも伝わりました。
１２世紀の日本では鎌倉幕府が建てられるなど、武士が新たな支配層として統治する時代が訪れていました。
平安時代末期から禅宗は知られていたのですが、この武士の時代になってから禅宗が一気に普及していくことになります。
SQ：なぜ武士の時代に禅宗が普及したのか？
武士はご存じの通り、戦場で生死をかけて闘う戦士でした。
なので生死をかける覚悟が必要だったことから、それまでの経典を読んだり念仏を唱えたりする仏教よりも、座禅で自分自身と向き合う禅宗の方が武士道とマッチしていたんです。
禅宗は鎌倉幕府の北条家に招かれて保護されるようになり、寺院が各地に建てられたことから、鎌倉幕府という武士の時代に禅宗が普及したというわけなんです。
代表的な栄西が開いた臨済宗は鎌倉幕府に支持されて保護されていました。
武士の生き様から、自分自身と向き合う禅宗の教えと合致し、鎌倉幕府に保護されるようになったため。
日本での禅宗の発展によって、本場中国で学びたいと思う僧侶たちが留学僧（るがくそう）として北宋や南宋に禅宗を学びに留学しました。
臨済宗が幕府と繋がって権力との癒着に疑問を持った道元が宋代に留学して、本来の禅宗を取り戻そうとして開いたのが曹洞宗だったんです。
こうした留学僧たちによって北宋や南宋から宋学や漢詩文、建築様式の技術など、いろいろな文化が日本に持ち帰えられて日本文化にも大きな影響を与えることになりました。
当時、日本の禅宗のお寺は海外の最新文化を知ることができる国際交流センターの役割もあったんですよ。
道教
そしてもう一つ影響を与えたのが道教でした。
道教は道家の思想と民間信仰の神仙思想などが融合してできた中国の独自宗教でしたね。
道教は後漢の時代に誕生して、北魏では国教に指定されて唐以降も保護されていたんですよ。
この道教では、すべてのモノの根元は「道（タオ）」と呼ばれて、「陰」と「陽」という２つのエネルギーが絶えず交わりながら宇宙のすべてが作り上げられるという考えがあります。
この「陰」と「陽」のバランスがとれていると、健康や繁栄をもたらすと信じられているんです。
こうした道教の宇宙論も士大夫たちに受け入れられて、宇宙万物の本質（理）を追い求めることに発展していったんです。
そんな道教も１２世紀に変化が起こります。
道教は唐の時代から保護されて宋代でも保護されて多くの寺院が建てられたんですが、次第に広大な土地を所有して、小作人の佃戸を大量に抱える道教寺院が出てきたんです。
中には消費者金融のように高い金利で金貸しをするところも出てきて、民衆の支持を失ってしまったんです。
そんな道教を批判して改革を唱えたのが王重陽という人物でした。
王重陽は金は支配していた頃の華北で改革を唱えて、道教の不老長寿は重要視せずに、仏教の禅宗や、儒教の教義も取り入れるハイブリットな教えを説きました。
このような道教・仏教・儒教の３要素を融合させた新しい道教を全真教といいます。
新たな道教として金の華北で成立した全真教は、宋代の従来の道教と対立しながらモンゴル帝国にかけて発展していきました。
全真教はその後、モンゴル帝国の時代に保護されて元の時代には各地に石窟寺院が造られるなど盛り上がったそうですよ。
技術改良
三大発明
宋の時代は生産力や経済力が発展したことで、それまであった技術が改良されて新たな発明が数多く起きた時代でもありました。
例えば、宋代は都市人口が増えたことで感染症がよく流行したことから、医学が急速に発展しました。
その中でも代表的なのが、活版印刷・羅針盤・火薬の三大発明と呼ばれるものです。
活版印刷
唐の時代には、木に文章を掘る木版印刷の技術が誕生していましたが、その技術が広まったのは宋代でした。
経済の発展によって民間の印刷業が発展して、仏教の大蔵経などが刊行されるようになって書物が少しずつ人々にとって身近なものになっていきました。
この木版印刷が朝鮮の高麗に伝わって作られたのが高麗版大蔵経でしたね。
この木版印刷は文章をそのまま掘る方法を採っていましたが、それを一文字ずつの印にして組み合わせて印刷する活版印刷の技術が宋の時代に誕生しました。
初めは土を固めて焼いたものが発明されて、その後に木を使った活版印刷なども開発されました。
しかし、漢字は他の言語より字数がとても多いのが特徴だったので、実際には宋代では活版印刷よりも木版印刷の方が使われていたそうです。
ちなみに活版印刷に関してはヨーロッパで１４５５年に初めてグーテンベルクが刊行した活版印刷物よりも約４００年近く早かったんですよ。
羅針盤
次が羅針盤です。
羅針盤とは磁石によって方角を知る道具のことですよね。
この磁石が南北を示すというのは中国では古くから知られていて、魏晋南北朝の六朝時代にはすでに方角を知る方法として使われていました。
そして宋代になるとジャンク船による海上交易で使われるなど、さらなる実用化が進んでいきました。
こうして中国商人が「海の道」で羅針盤を使っていたのが、ムスリム商人の目に留まって広まり、それがヨーロッパまで使わっていくことになりました。
ヨーロッパに伝わった羅針盤は、大航海時代を支える重要な技術としてルネサンス時代を支えることになりました。
火薬
宋代はキタイ（契丹、遼）や西夏、金などの異民族との戦いが絶えなかったので、軍事技術の改良もおこなわれました。
その中で武器として実用化されたのが”火薬”でした。
火薬は硝石・硫黄・木炭を混ぜてできた混合物で、７世紀頃にはすでに発見されていました。
もともと不老不死の薬を作ろうとした過程で、いろいろな物質を混ぜると化学反応が起こることが知られていたんです。
そして７世紀に硝石・硫黄・木炭をまぜて火をあてると爆発する火薬が発見されたんです。
そして宋代になると異民族との戦いのために軍事技術に転用されて、竹筒に火薬を詰めてその爆発力で弾丸を飛ばす兵器などが開発されました。
簡単な大砲みたいなものですね。
金との戦闘で初めて実用化されて、１３世紀頃から金やモンゴルとの戦いで広く使用されるようになっていきました。
その後、火薬はモンゴル帝国によってヨーロッパまで広がっていき、大砲などの技術が発達して１６世紀にはアジアへその軍事技術が逆輸入されていくことになります。
百年戦争では大砲が普及するなど、それまでの騎士主役の戦術から火器中心の戦術へと変化していきました。
これによってヨーロッパの騎士は没落していったんですもんね。
三大発明の影響
これら三大発明は、後にイスラーム世界を経由してヨーロッパに伝えられることになりました。
そしてヨーロッパではそれらの技術がルネサンスに影響を及ぼして、近代ヨーロッパを形作っていくことになりました。
・活版印刷・・・宗教改革
・羅針盤・・・大航海時代
・火薬・・・火砲、騎士の没落
まとめ
MQ：宋代の宗教や技術発展は周辺諸国にどんな影響を与えたのか？
A：宋代では禅宗や道教が発展し、禅宗は武士の仏教として日本で広まり、道教は士大夫に受け入れられ、その後、全真教などの新たな道教も誕生した。一方、木版・活版印刷が文化普及を促し、高麗や日本の知識発展に寄与した。羅針盤は海上交易を支えヨーロッパへ伝播し、火薬は軍事技術の進化を通じて世界の戦術変革を生み出すなど、近代ヨーロッパの文化形成に影響を与えた。
今回はこのような内容でした。
次回はモンゴル帝国の成立についてです。この時期になぜ大帝国が誕生したんでしょうか？
それでは次回もお楽しみに！
「愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ。」by ビスマルク
PowerPointスライドは他の記事も合わせて「note」にてダウンロードし放題！ダウンロードは下のURLから！
Xのフォローお願いします！
ブログやnoteの更新などを投稿しています。
noteの更新投稿をリポストすると、powerpointスライドやイラストを割引や無料でダウンロードすることができます！
ぜひX（旧Twitter）でフォローしてみてください！
コメント