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はじめに

前回はこのような内容でした。


今回は自治を獲得した中世都市では、どんな人たちが生活していたかについてみていきます。ギルドが結成されるんですが、いったいどんな組織だったんでしょうか?
それでは一緒にみていきましょう!
MQ:中世都市でのギルドの発展は西ヨーロッパに何をもたらしたのか?
今回の時代はここ!

農奴から都市の市民へ
中世の西ヨーロッパでは、11世紀頃から始まった貨幣経済と商業圏の拡大によって、封建領主の支配から脱しようとする運動が起きて自治都市が形成されましたよね。
それによって周辺の荘園で農奴として暮らしていた農民たちは、自由をもとめて自治都市に亡命するようになります。

ドイツでは都市で1年と1日住めば自由身分となって市民権をもらえたそうですよ。このことから「都市の空気は(人を)自由にする。」といわれるようになりました。
荘園で領主に束縛される生活から、都市で自由な身分として暮らせるならそりゃ行きたくなりますよね。

ギルドの形成
ギルドとは?
そんな都市では自治を獲得する前から商人たちによってお互いの営業権を保障し合うための組合組織が作られていました。
この組合組織のことをギルドといいます。
商人ギルド
初めは遠隔地貿易に従事していた大商人たちが作った商人ギルドが中心でした。
この商人ギルドは、商売をする上での価格の安定性や営業の防衛をお互いに協力しながら保障し合うもので、このギルドによって交易が比較的安全におこなわれました。

船の難破や盗賊被害、商売詐欺など、遠隔地貿易は常に危険と隣り合わせだったのでこのように「お互いに商売を守り合える組織を作ろう!」となったわけです。
この大商人たちによって結成された商人ギルドは、都市の自治獲得を求めた運動の中心となって封建領主からの独立に大きく貢献しました。

商人ギルドは大商人たちの莫大な財力によって都市は自治を獲得できたわけです。
なので独立した自治都市は各都市ごとに独自の行政組織で都市を統治していましたが、その中心にいたのは商人ギルドの大商人たちで、新たな貴族層として都市の政治をおこなうようになっていきました。

同職ギルド(ツンフト)
このように都市では商人ギルドが自治の中心になっていったわけですが、このギルドには当時商人だけでなく、手工業者たちのような職人たちも含まれていました。

しかし、商人ギルドでは職人たちよりも商人たちの方が保護が厚くギルドの性質上有利だったので、このようなことが起きます。

商品を低価で仕入れて、交易の時に高値で売れば利益が大きくなるぞ。だから職人たちからできるだけ低価で仕入れよう。

これじゃ俺たちの待遇が悪いぞ!商人だけがおいしい思いをしているぞ!
ということが起きて職人たちは商人ギルドに対して不満を持つようになっていきました。
このような経緯から、商人ギルドから生産者である職人たちが分離して、同職ギルド(ツンフト)という職人だけで構成されるギルドが結成されるに至りました。

細かく分けられた職業ごとにギルドが結成されたので“同職”という呼び方になっています。
ほぼすべての職業にギルドがあったそうですよ。
同職ギルドは親方という熟練した技術を持つ職人で構成されていて、この親方が弟子たちを指導しながら働くという厳しい上下関係がありました。

日本の職人(大工、料理人など)にも似たような関係性がありますよね。
商人ギルドと同じで、同職ギルドでも原料の確保や製品の基準、価格や報酬、労働時間などを取り決めて、時には軍隊を動員して営業の権利を守り合う組織として機能しました。

ツンフト闘争
“生産者の同職ギルド”は、

生産物を高値で販売したい!
“卸売の商人ギルド”は、

生産物を低価で仕入れて高値で販売したい!
ということで、この両者はどうしても利害が対立する関係でもあり、政治を独占する商人ギルドに同職ギルドは不満を持っていたので、しばしば商人ギルドと同職ギルドが対立して抗争するツンフト闘争が起きました。
お互いに軍隊を動員して争うなど過激になるケースもありましたが、このツンフト闘争を通して同職ギルドが権利を獲得していって、都市の政治に参加するようになっていきました。

ギルドの性質
SQ:ギルドが都市に与えた影響とは?
先ほども説明した通り、こうしたギルドは自分たちの商売(営業)を守るためにさまざまな取り決めや規制をおこなっていました。
商品の品質や規格、価格や労働条件などを規約にまとめて労働者や組合員を厳しくコントールしていました。
なので、ギルドに加盟していない非組合員の商業活動を禁止して、一部の人たちが利益を求めて他を出し抜くような自由競争も禁止したことで、ギルドによって市場を独占して監視するような仕組みが出来上がりました。
これによってギルドの構成員は安定した収入を得るようになって、経済的に安定した生活を送れるようになりました。


しかし、これによってギルド構成員の生活は安定するようになりましたが、自由競争が禁止されたことである問題が起きました。
みなさんは何かわかりますか?
それは“技術発展の停滞”です。
さらなる利益や便利さを求めた結果、技術革新が起こるので、自由競争が禁止されてしまうと技術発展が止まってしまうんです。
ギルドは生活や利益の安定性を実現した結果、都市の経済と技術の自由な発展を妨げてしまったんです。
厳格な規約によって市場を独占したことで組合員の生活は経済的に安定したが、自由競争を禁止したことで都市の経済と技術の自由な発展を妨げてしまった。

大富豪の登場
都市の貴族層(大商人)の中には、神聖ローマ帝国や教皇庁にお金を貸して(融資)政治を左右させたり、一族から教皇を輩出するような大富豪も現れるようになります。
・フッガー家(アウクスブルク)
・メディチ家(フィレンツェ)


ではこの2つの大富豪一族についてみていきましょう。
フッガー家
フッガー家はドイツの都市アウクスブルクで繁栄した大商人一族でした。
拠点のアウクスブルクが地中海商業圏と北ヨーロッパ商業圏との中間地点だったので、中継貿易によって商売が繁盛して、特にイタリアの都市ヴェネツィアとの交易で莫大な資産を築きました。
しかも交易で手に入れた財力で近くで発見された銀山や銅山の採掘権も手に入れてしまい、おまけにそのお金を使って金融業にも乗り出していきました。

ここで言う「金融業」とは「お金の貸し借り」のことを指します。お金を貸してそれに利子をつけて返す。金融機関(銀行)はその利子で儲ける。といった仕組みでした。
金融業では神聖ローマ帝国や教皇庁にお金を大量に融資(ゆうし)していたほどでした。
融資・・・金融機関(銀行など)からお金を借りること。

融資のお得意さんのスケールが大きすぎてビックリしちゃいますね。それほどまでフッガー家は莫大な資産を築いていたんですね。
全盛期には南ドイツの繁栄を「フッガー時代」と言ったほどです。
このようにフッガー家の融資によって巨大な組織が維持されていたので、政治に大きな影響を与えていたと言えるでしょう。

その後、商業圏の拠点が移っていったり、融資していた神聖ローマ帝国が財政破綻してしまったことで、フッガー家は徐々に衰退・没落していくことになりました。

メディチ家
対してメディチ家はイタリアの都市フィレンツェで繁栄した大富豪一族でした。
メディチ家はフィレンツェで薬屋から成り上がって金融業の成功によって莫大な資産を築いた一族でした。
金融業はフィレンツェに留まらず、ヨーロッパ中に支店を持つ大銀行に発展しました。
やっぱりその金融事業の規模も大きくて、フランス王やドイツの諸侯たちへの融資だけでなく、教皇の資産管理を任されてしまうほどでした。
その金融業で得た利益を交易に回してさらに利益を出すといった循環で資産と名声を高めていったので、当然フィレンツェの政治にも影響を与えて、関与していくようになりました。

メディチ家はその資産を持って、16世紀以降に2人の教皇を輩出してしまうほど名声を上げていきました。
まさに“政治”と“宗教”に影響を与えた一族だったんですね。
ちなみにメディチ家は今後登場する「ルネサンス」などの芸術を保護したことでも有名ですね。
メディチ家はその後数百年間、西ヨーロッパの情勢に影響を与えていましたが、18世紀に一族の血が途絶えてしまって衰退していきました。

このように都市の商人から財を成して、国王や教皇の政治に影響を与えるような大富豪の存在が西ヨーロッパにはいたんですね。

商人が台頭するということは、それだけ西ヨーロッパの経済が発展したといえますね。
まとめ
MQ:中世都市でのギルドの発展は西ヨーロッパに何をもたらしたのか?
A:厳格な規約によって交易を支配し、公平な利益と組合員の経済的安定を実現反面、厳格過ぎる規約は時に経済や技術の自由な発展を妨げる結果をもたらした。ギルドの発展によって繁栄した都市では、金融業などによって国王や教皇の政治を左右させるフッガー家やメディチ家のような大富豪も現われるようになった。

今回はこのような内容でした。

次回は東ヨーロッパに視点を移してビザンツ帝国の衰退の過程について見ていこうと思います。ビザンツ帝国はどんな理由で衰退していったんでしょうか?
それでは次回もお楽しみに!
「愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ。」by ビスマルク
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