世界史を手軽に学びたい方に向けて授業形式でブログ記事を書いています。復習や予習の際に使いやすい内容になっています。「問い」の設定や記事の最後には使用したパワポもダウンロードできます!それではスタンダード世界史探究をどうぞ!※あくまで1例なので、「MQ」や「SQ」、スライド等は自由にアレンジしてください。
はじめに
前回まではこのような内容でした。
今回は、いままでのメソポタミアの「宗教」と「文化」について授業をします。
みなさんが知っているあの「習慣」も実はメソポタミア発祥なんです。では行ってみましょう。
MQ:現在にも残るメソポタミアの文化とは何か?
宗教
メソポタミアは多数の発展した都市国家が集まっている文明でしたね。
なのでその都市国家ごとで崇拝される神も異なり、守護神や自然神が各地で崇拝される多神教でした。
なので、支配する民族が替わるごとに、最高神も入れ替わっていたんですね。
初期王朝時代・・・エンリル神
バビロン第1王朝時代・・・マルドゥク神 etc
またシュメールでは、のちの諸民族に影響をあたえた『ギルガメシュ叙事詩(じょじし)』などの宗教文学も発展しました。
叙事詩・・・歴史的事件や英雄の生涯をありのままに述べたもの
ではここで、
SQ:シュメール神話が影響をあたえた作品とは?
以下の抜粋を読んで、何の物語のもとになっているかを考えてみましょう!
「シュルパックの人、ウパラ=トゥトの息子よ、家を打ち壊し、舟を造れ。…すべての生きものの種を舟に積み込め。おまえが造るべきその舟は、その寸法を定められた通りにせねばならぬ。…六日六晩にわたって、嵐と洪水が押し寄せ、台風が国土を荒らした。…そしてすべての人間は泥土に帰していた。……(ギルガメシュ叙事詩の洪水物語、高橋正男訳)
これを読んで一部の人は「あっ!あれかも!」と思ったかもしれませんね。
注目すべきはここ!
「シュルパックの人、ウパラ=トゥトの息子よ、家を打ち壊し、舟を造れ。…すべての生きものの種を舟に積み込め。おまえが造るべきその舟は、その寸法を定められた通りにせねばならぬ。…六日六晩にわたって、嵐と洪水が押し寄せ、台風が国土を荒らした。…そしてすべての人間は泥土に帰していた。……(ギルガメシュ叙事詩の洪水物語、高橋正男訳)
この下線部を読むとなにか聞いたことのあるストーリーですね。
なんですね!
ユダヤ教やキリスト教の聖典に書かれている物語が、実はメソポタミア発祥なんです!
これ意外と知られてない事実・・・
「ノアの洪水神話」については映画も公開されているので、ストーリーが気になる方はこちらを見てみてください。最新のCGで迫力満点です!
ではもうひとつ、こちらを読んでください。
「この森を破壊し、ウルクの町を立派にすることが、人間の幸福になるのだ」
森の中に入っていくとそこには森の神フンババというのがいて、森を守るためにギルガメシュたちと闘うんですが、最後には森の神はエンキムドゥに殺されてしまう。フンババは頭を切り落とされて殺され、エンキムドゥは「頭をつかみ金桶に押し込めた」。(ギルガメシュ叙事詩、高橋正男訳)
そこのあなた、「え、もしかしてこれ日本の名作やんっ。」て、いま思いましたね(笑)
そう、この話、日本のジブリの代表作「もののけ姫」のストーリーと似ているんです。
ここで説明をすると長くなるので、気になる方は映画を見て確認してください。本当に似てます。
これらのように、メソポタミアの宗教文学は世界各地の神話に影響を与えました。
文字
最古の文字は、前3100年(約5000年前)ごろ、シュメール人によって発明されました。
そう、楔形文字(くさびがたもじ)ですね。
この文字は粘土版に葦(あし)という植物の茎を押し付けて書かれ、表音文字としても表音文字としても使われました。
表音文字・・・「a,b,c」のように音(意味のないもの)を組み合わせて、「apple(りんご)」などの意味のあるものを表現する文字
表意文字・・・「木」やそれが集まった「森」など、その文字だけで意味のあるものを表現できる文字
SQ:まずそもそもなぜ文字が書かれるようになったのか?
みなさんは、普段なぜ文字を使うのですか?
聞いて覚えられるのが一番効率的ですが、人間の記憶力は限界があります。
普段使っているお金の量も覚えられないのに、それが国家レベルになると余計に記録力だけでは無理ですよね。笑
都市国家は大量の貢納物の管理、税の管理など様々な記録の管理が必要となります。
なぜ文字がつくられたのか?それはこうです。
紙に書き起こすのは大変ですが、当時は粘土版に棒の角度を変えながら記していたので、コツを掴めばスラスラ記せそうですね!
ちなみに実際にYouTubeには、粘土に楔形文字を記している動画もあるので検索してみてください!
様々なサイトにこのような変換も出ているので、名前などを書かせてみると盛り上がります笑
楔形文字の解読に情熱を捧げたイギリス軍人
この楔形文字が解読されたのは19世紀半ば、今からまだ200年足らず前の出来事なんです。
解読の手がかりを掴んだのは、ローリンソンというイギリス軍人でした。
彼は1835年から2年間、軍事使節団の一員としてイラン(当時はカージャール朝)で暮らしていました。
イランのザクロス山脈中のべヒストゥーンの絶壁に巨大なレリーフ像と多くの楔形文字が彫られているのは、早くから知られており、その解読に情熱を捧げたのがローリンソンだったのです。
彼は2年間、このべヒストゥーン碑文が彫られた絶壁を何度もよじ登って書き写す作業をおこなったんです!
まさに命がけの作業。。。
その書き写した文字を研究し、1847年に解読に成功!古代オリエントの歴史を知る手がかりを掴んだんです!
この類まれない情熱と努力、ローリンソンさんにはまさに感服です。笑
ちなみにこのべヒストゥーン碑文に記されていたのは、のちに登場するアケメネス朝のダレイオス1世の戦勝記念だそうです。
天文・暦法・数学
メソポタミアでは星占術、いわゆる天文が発達していました。
SQ:なぜメソポタミアでは、星占術が発達したのか?
これはメソポタミアがどのような社会であったかがわかると理解できます。
メソポタミア文明の生命線はティグリス・ユーフラテス川の氾濫時期の把握です。
川の氾濫時期 = 種まきの時期
しかし、事前にこの氾濫時期を知っておかないと、その後の耕作がうまく運べません。氾濫なので、水害の被害もありますしね。
では、どのように氾濫時期を把握していたのか?
それが「星」の動きだったんです。
当時は、今の時計やカレンダーのような便利なものがなかったんです。毎年同じ動きをするのが「星」だったんですね。
ただ星好きの人が発見したのではなく、メソポタミア文明の生き残るすべだったのですね。
星占術を駆使して、月の動きをもとに作られたのがメソポタミア文明のカレンダー、太陰暦です!
太陽暦・・・現在使用されている暦法。エジプト文明でつくられ、後世に改良が加えられ現在のかたちになっている。
これによって川の氾濫がおこるまでの期間を1年としたんですね。ちなみに太陰暦は354日でした。
しかし、これだと1年間でやく11日ずつずれてしまうんです。ピンチ!
そこでメソポタミア文明は考えました。
たまにズレた分を修正してあげればいいじゃん!
それでできたのが閏月(うるうづき)だったんです。
こうして、太陰暦に閏月を設けてズレを修正した太陰太陽暦が完成しました!
普段みなさんが常に気にしながら生活を送っている「時間」。
1時間は60分ですよね。1分は60秒ですよね。
小学生が時間の計算に苦労するわけ、それは1時間が「100分」ではないからなんです!1分が「100秒」ではないからなんです!
単位が「100」であればどれだけ計算が楽か。
なぜ「60」なんですか!?
小学生ながらに私はこんな疑問をいだきました。
なぜ「60」ごとに単位がかわるのか?それはメソポタミア文明で六十進法が考え出されためです。
六十進法とは、「60」ずつまとめて上の位に上げていく数の表記法です。
時間・・・1時間=60分 1分=60秒
円周・・・360度(60の6倍)
ちなみに私たちが普段よく使うのは「十進法」ですかね。1→10→100の数え方ですね。
なので現代人からすると、時計の数え方が少し複雑に感じてしまうんですね(笑)
あとみなさんが何気なく使っているカレンダー。なぜ1週間は「7日」なんでしょう?
この1週間7日制もメソポタミアのバビロニアで発明されたといわれています。
月の[新月]→[上弦]→[満月]→[下弦]→[晦(かい)]と変化していく周期が7日だったので、それを1週とし、1週間7日制ができたと言われているんです。
まとめ
MQ:現在にも残るメソポタミアの文化とは何か?
A:農耕社会の発達に必要な天文・暦法・数学・農学などの実用の学問が発展し、六十進法や1週間7日制などの文化が現在でも残っている。
今回はこのような内容でした。
次回は、メソポタミア文明から離れてオリエントのエジプト文明へと入っていきます。
メソポタミア文明とも密接に関係していたこのエジプト文明では、みなさんがよく知っている遺跡がたくさんありますね。
ピラミッドやスフィンクスやツタンカーメンなど、、、
この独自の発展をとげたエジプト文明を紐解いていきましょう!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
「愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ。」by ビスマルク
この記事で使用した授業スライドのダウンロードはこちら↓
・『世界史の窓』、世界史の窓 (y-history.net)
・木村 靖二 ・岸本 美緒 ・小松 久男・橋場 弦(2022)、『詳説世界史探究』、山川出版社
・木村 靖二 ・岸本 美緒 ・小松 久男(2017) 、『詳説世界史研究』、山川出版社
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