世界史を手軽に学びたい方に向けて授業形式でブログ記事を書いています。復習や予習の際に使いやすい内容になっています。「問い」の設定や記事の最後には使用したパワポもダウンロード可です!それではスタンダード世界史探究をどうぞ!※あくまで1例なので、「MQ」や「SQ」、スライド等は自由にアレンジしてください。
はじめに
前回はこのような流れでした。
シリア・パレスチナで主に活動した民族は以下の3つでしたね。
●アラム人
●フェニキア人
●ヘブライ人
今回は最後の民族「ヘブライ人」についてやっていきます。
このヘブライ人は別名「ユダヤ人」ともいわれています。聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
言わずもがな、あの「ユダヤ教」を作った人々です。
ユダヤ人の歴史はとにかく悲しいんです。ではその歴史の始まりとはどのようなものだったのか、一緒にみていきましょう!
MQ:ユダヤ教はなぜ誕生したのか?
モーセの「出エジプト」
ヘブライ人はもともと、メソポタミアのユーフラテス川上流で遊牧生活を送っていましたが、前1500年ごろにパレスチナに定住しました。
そのころ、シリア・パレスチナではヒクソスがエジプト中王国に侵入していた時代であり、ヘブライ人の一部はヒクソスと一緒にエジプトに移住します。
しかし、ヒクソスが撃退されて新王国時代になると、ヘブライ人は異民族ということもあり強制労働などの圧政を受けてしまいます。
もうこんな生活は嫌だ!エジプトから出たいよ〜
故郷のパレスチナに戻りたい!
ヘブライ人は、もともとの故郷であるパレスチナへの帰郷を願うようになるんですね。
そんな中で、前13世紀ごろにモーセという人物が現れます。
私は神からお言葉を授かった。
今こそエジプトを出てパレスチナへ帰るのだ!
ヘブライ人は、この指導者モーセによってエジプトから脱出します。この出来事を「出エジプト」と言います。
ヘブライ人は当時何百万人という規模で滞在していました。どのようにヘブライ人たちが脱出したのかは『旧約聖書』の「出エジプト記」に記されています。内容はかなり神話チックで信憑性には欠けますが。
映画化もされているので、ぜひ観てみてください。
モーセが預言を受けた神の力によって、エジプトはヘブライ人を出さざるおえなくなるんですね。
特に紅海に阻まれて追撃してくるエジプト軍に追い込まれそうになった際に、神の力によって海が裂けてヘブライ人だけを渡らせて、後から渡ってきたエジプト軍は海に飲み込ませるシーンは圧巻です。(モーセの奇跡)
脱出の経緯や出来事はかなり現実と矛盾するところがあり、モーセ自身も実在したかどうか怪しいとも言われていますが、これらは民族的体験として語り継がれています。
統一王国の成立
ヘブライ人はしばらく複数の部族からなるゆるい連合体として生活してました。
普段はそれぞれ独立していていざとなったら協力しあうような関係ですかね。
しかし、ここでもあの民族が登場しヘブライ人に影響を与えます。
「海の民」です。ほんと古代ではよく出てきますね。笑
正確にはその一派であるペリシテ人が侵入してきて、激しい抗争を繰り広げました。
そうなるとこの法則が起こります。
「敵の敵は味方」理論と同じですね。
緊急時は特かく早い対応が求められます。みんなで相談し合うよりも、誰か強い指導者によって指示を出す方が対応が早く、動きに一体感がでます。
この「強い指導者」が王となり、前11世紀末にヘブライ王国が誕生するんです。
その後、第2代の王ダビィデがペリシテ人を撃退し、首都をイェルサレムに定めます。
このイェルサレム、現在の中東問題の一角を担っていて宗教上とてもデリケートな場所になっています。のちにキリスト教やイスラーム教の聖地にもなり、イェルサレムに現在3つの聖地が混在している状態になってます。
カオスですね。笑
ダビィデの子ソロモン王の頃には、イェルサレムに神殿と宮殿を建て、交易によって王国の繁栄が頂点に達しました。
統一王国の分裂とバビロン捕囚
ソロモン王は優秀だったのですが、神殿や宮殿の建設や常備軍の費用などで民衆には重税がのしかかっていました。
現在でも増税に対しては敏感に反応しますよね。これも今も昔も同じです。
なので、ソロモン王の死後には民衆による反乱が起こってしまいました。しかも王位継承に反対した北部の一族が、別の王を立てて独立してしまったんです。
この独立した北はイスラエル王国、南をユダ王国としてヘブライ人国家は分裂状態となってしまいました。
この2つの王国は、お互いに抗争しながら衰弱していってしまいます。
そして、前722年にイスラエル王国がアッシリアに滅ぼされ、前587年にはユダ王国が新バビロニアに滅ぼされてしまいました。
しかも新バビロニアに滅ぼされたユダ王国は神殿も破壊され、住民は労働力としてバビロンに強制移住させる、バビロン捕囚がおこなわれました。
SQ:「バビロン捕囚」はヘブライ人の思想にどんな影響を与えたのか?
以下は『旧約聖書』での「ユダ王国の滅亡とバビロン捕囚」についての記述です。
これを読んで、ヘブライ人は当時どのような気持ちになったのでしょうか?
自分たちの国が無くなって悲しい。
「なんで自分たち(ヘブライ人)だけこんな目に、、、」て思ってしまいそう。
こんな意見が出てきそうですね。
このユダ王国の滅亡とバビロン捕囚によって、ヘブライ人にどんな影響があったのか?
誰かこの状況を救ってくれ~。
日々苦しい生活を送っているとこう思ってしまうのも当然ですよね。
この思想がやがて、新たなる宗教であるユダヤ教の誕生へとつながっていきます。
SQ:ヘブライ人はなぜ“ユダヤ人“になったのか?
バビロン捕囚後からはヘブライ人はユダヤ人と呼ばれるようになります。
なぜ呼び方が変わったのでしょうか?
ちなみに、「ヘブライ人」という呼び方も他民族からのものであり、自分たちのことは「イスラエル人」と呼んでいました。
ユダヤ教の成立
このユダヤ教誕生までのストーリーは、モーセによる「出エジプト」までさかのぼります。
モーセはパレスチナに戻る最中にシナイ半島のシナイ山に寄った際、唯一神ヤハウェから10カ条からなる契約「十戒(じっかい)」を授かります。(映画『エクソダス 神と王』の終盤でこのシーンがあります。)
この時から、唯一神ヤハウェへの信仰を硬く守る一神教が確立されました。
王国時代は周辺の多神教の影響をうけたりと右往左往したりもあったんですが、再びヤハウェへの信仰が高まります。
なぜヤハウェへの信仰が復活したんでしょう?
そうです、王国の滅亡とバビロン捕囚による苦しい経験からでしたね。
ヘブライ人はこの苦しさから解放されるために、自分たちだけの神ヤハウェに神頼みするしかなかったんです。
それほどまでに苦しい経験だったんですね。
これらの苦しい経験から、
神ヤハウェを信じれば私たちは救われるんだ!
のような、ヘブライ人だけが選ばれて救われるという選民思想や、
いつか救世主が現れて私たちを解放してくれるはずだ!
といった救世主(メシア)の出現を待ち望むようになりました。
そして、ヘブライ人に転機が訪れます。
バビロンからの解放です!
捕囚を行った新バビロニアがアケメネス朝によって滅ぼされます。
そして前538年、アケメネス朝キュロス2世によって、
我が国の民となったからには面倒を見てやる。自分たちの土地に戻るがいい。
これによって、ヘブライ人は約50年にも及ぶバビロン捕囚から解放されたのです!
帰国したヘブライ人たちは、イエルサレムに神殿を再建しました。
そこでモーセの十戒を中心とした法律を守ることを重視した律法主義的な宗教が確立されます。
それがユダヤ教です!
ヤハウェの信仰は以前からありましたが、ここで色々整備されて確立されたんですね。
ヘブライ人の伝承や、神々への讃歌、預言者の言葉などをまとめたものは『旧約聖書』として教典となりました。
ユダヤ人は自分達の教典を『旧約聖書』とは呼ばないんです。
この『旧約聖書』とは、のちにユダヤ教の中から誕生するキリスト教が「神との新しい契約」である『新約聖書』と区別するために、「神との古い契約」という意味で『旧約聖書』と名づけたものなんです。
なので、これは他宗教からの呼び方であり、ユダヤ教徒たちはあくまで“唯一の教典“として扱っています。
SQ:ユダヤ教の特徴とは何か?
ではここで、ユダヤ教の特徴を今までの内容と、下の「十戒」の見て考えてみましょう!
大きな特徴としてはこの2つに注目しておきましょう。
他にもさまざまな特徴はありますが、一神教や偶像崇拝の禁止はそれまでの宗教にはなかった特徴であり、これがのちのキリスト教やイスラーム教にも影響を与えることになります。
まとめ
MQ:ユダヤ教はなぜ誕生したのか?
A:モーセの「出エジプト」の後、祖国の喪失やバビロン捕囚などの苦難の中で、唯一神ヤハウェへの信仰による選民思想や救世主の出現を期待するようになり、解放後に律法主義的な信仰が確立されたため。
今回はこのような流れでやってきました。
ユダヤ教はキリスト教の母体となり、ヨーロッパの芸能活動などに大きな影響を与えました。またイスラーム教の成立にも関わっていきます。
ヘブライ人(ユダヤ人)はその後ローマ帝国によって支配されてしまい、第二次世界大戦が終わるまで、自国を再建できることはできませんでした。
ユダヤ人(ヘブライ人)はとにかく悲しい歴史を持つ民族です。しかし、だからこそ国際的に活躍する民族してきた民族でもあります。それらの歴史もおいおいやっていきましょう!
次回は地中海のエーゲ海(今のギリシャ)の文明を見ていきます!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
「愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ。」by ビスマルク
この記事で使用した授業スライドのダウンロードはこちら↓
・『世界史の窓』、世界史の窓 (y-history.net)
・木村 靖二 ・岸本 美緒 ・小松 久男・橋場 弦(2022)、『詳説世界史探究』、山川出版社
・木村 靖二 ・岸本 美緒 ・小松 久男(2017) 、『詳説世界史研究』、山川出版社
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