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『ドン=キホーテ』

史料集
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概要

『ドン=キホーテ』は、スペインの作家セルバンテスが1605年に前編、1615年に後編を発表した長編小説です。

騎士道物語に夢中になった田舎の郷士アロンソ=キハーノが、自らを「ドン=キホーテ」と名乗り、正義を求めて旅に出るという物語です。

彼の従者サンチョ=パンサとの掛け合いが、理想と現実の対比を鮮やかに描き出します。

歴史的背景

17世紀初頭のスペインは、かつての黄金時代の余韻を残しつつも、帝国の衰退が始まっていました。

騎士道や封建制度は過去のものとなり、社会は新しい価値観へと移行しつつありました。

セルバンテスはこの変化の中で、古い理想にしがみつくドン=キホーテの姿を通して、時代の矛盾や滑稽さを風刺しています。

文化的背景

当時のスペインでは、騎士道文学が一世を風靡していました。

英雄が悪を倒し、貴婦人に仕えるという物語が人々の心を掴んでいたのです。

『ドン=キホーテ』は、そうした騎士道文学へのパロディでありながら、ただの風刺にとどまらず、人間の尊厳や夢、そして挫折を描いた深い作品です。

また、物語の中には聖書的な象徴や哲学的な問いも散りばめられています。

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主な登場人物

ドン=キホーテ:騎士道に憧れる郷士。理想に燃え、風車を巨人と見間違えるほど現実との境界が曖昧。

サンチョ=パンサ:現実的な農夫で、ドン=キホーテの従者。忠誠心とユーモアに満ちた人物。

ロシナンテ:ドン=キホーテの愛馬。痩せた老馬だが、主人には高貴な戦馬と信じられている。

ドゥルシネーア=デル=トボーソ:ドン=キホーテが理想化する女性。実在しないが、冒険の動機となる。

ペロ=ペレス:村の司祭。ドン=キホーテの狂気を心配し、彼を助けようとする。

ニコラス親方:村の床屋。ペロ=ペレスと共にドン=キホーテの行動を見守る。

サンソン=カラスコ:大学出の学士。ドン=キホーテを正気に戻そうとする。

公爵夫妻:後編に登場。ドン=キホーテ主従に悪戯を仕掛ける貴族。

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著書の内容

前編:騎士の誕生と初めての旅

1.騎士道への目覚め

アロンソ=キハーノは、騎士道物語に夢中になるあまり、自らを「ドン=キホーテ」と名乗り、遍歴の騎士として旅に出る決意をします。

痩せ馬ロシナンテに乗り、空想上の貴婦人「ドゥルシネーア」に仕える騎士として、正義を広める旅が始まります。

2.宿屋を城と誤認

最初の旅では、宿屋を「城」と思い込み、宿の主人に騎士としての叙任を求めます。

主人は面白がって儀式を行い、ドン=キホーテは正式な騎士になったと信じ込みます。

3.風車との戦い

最も有名な場面のひとつが、風車を巨人と見間違えて突撃する場面。

現実と幻想の境界が曖昧な彼の行動は、滑稽でありながらも、理想を信じる力強さを感じさせます。

4. サンチョ・パンサの登場

ドン=キホーテは農夫サンチョ=パンサを従者として迎えます。

サンチョは「島の統治者になる」という約束に惹かれ、旅に同行します。

彼は現実的で機知に富んだ人物で、ドン=キホーテの奇行に振り回されながらも忠誠を尽くします。

5.囚人の解放とその報い

ドン=キホーテは、ガレー船送りの囚人たちを「不正な扱いを受けている」と信じて解放しますが、彼らは恩を仇で返し、主人公を襲って逃げ去ります。

この場面は、理想が現実に通じないことを象徴しています。

6.挿話の数々

前編には「捕虜の話」「ルシンダとカルデーニオの話」など、ドン=キホーテとは直接関係のない挿話が多く挿入されています。

これらはセルバンテスが短編作家として培った技術の表れで、物語に深みを与えています。

後編:名声と迷走の旅路

1.前編の出版をめぐるメタフィクション

後編では、前編がすでに出版されているという設定が登場人物たちに共有されており、彼らがその内容を知っているというメタフィクション的な展開になります。

ドン=キホーテとサンチョは「有名人」として扱われ、旅の途中で様々な悪戯に巻き込まれます。

2.公爵夫妻の悪戯

貴族の公爵夫妻は、ドン=キホーテ主従を厚くもてなしながら、彼らに数々の悪戯を仕掛けます。

例えば、ドゥルシネーアを「魔法で変えられた」と信じさせたり、サンチョに「島の統治者」としての役割を与えたりします。

3.サンチョの統治

サンチョは実際に「島の統治者」として任命され、短期間ながらも善政を敷きます。

彼の判断力と庶民的な知恵が光る場面であり、理想と現実の間で揺れる彼の成長が描かれます。

4.贋作への対抗

1614年に出版された贋作『ドン=キホーテ』に対抗する形で、セルバンテスは後編の中でその存在を批判し、物語の舞台をサラゴサからバルセロナへ変更するなど、意図的な修正を加えています。

5.最後の旅と死

ドン=キホーテは、サンソン=カラスコとの決闘に敗れ、騎士としての旅を終えることになります。

彼は正気を取り戻し、アロンソ=キハーノとして静かに人生を終えます。

理想を追い続けた彼の姿は、悲しみと尊厳をもって描かれています。

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まとめ

『ドン=キホーテ』は、ただの風刺小説ではなく、人間の夢と現実、理想と挫折を描いた普遍的な物語です。

セルバンテスは、騎士道という過去の価値観を笑いながらも、そこに宿る人間の希望や尊厳を見つめています。

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