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『統治二論』

史料集
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概要

『統治二論』は、17世紀イギリスの哲学者ロックによって書かれた政治哲学の著作です。

この本は、政府の正当性とは何か、そして人々がどのようにして自由と権利を守るべきかを論じています。

特に「第2論文」は、近代民主主義の基礎となる「社会契約論」や「抵抗権」の考え方を明確に示したことで有名です。

歴史的背景

17世紀のイギリスは、政治的にも宗教的にも大きな混乱の時代でした。

王政と議会の対立が続き、ピューリタン革命(1642〜1649)や名誉革命(1688)など、王の権力をめぐる争いが相次ぎました。

ロックがこの本を書いたのは、名誉革命の直前。

王の絶対的な権力に疑問を持ち、「人々の自由を守る政府とは何か?」を問い直す必要があったんです。

文化的背景

この時代のヨーロッパでは、「理性」や「自然法」といった考え方が広まりつつありました。

神の意志ではなく、人間の理性によって社会や政治を考える「啓蒙思想」の芽が出始めていたんです。

ロックはこの流れの中で、「人間は生まれながらにして自由で平等である」という考えを打ち出しました。

これは後のアメリカ独立宣言やフランス人権宣言にも大きな影響を与えます。

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主な登場人物

ロック:著者。イギリスの哲学者・政治思想家。経験論の祖。

ロバート=フィルマー:ロックが第1論文で批判した相手。王権神授説を唱えた人物。

チャールズ2世/ジェームズ2世:当時のイギリス国王。絶対王政を進めたことで、ロックの批判対象に。

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著書の内容

第1論文:王権神授説への反論

この部分では、ロバート=フィルマーの『パトリアーカ』という本に反論しています。

フィルマーは「王の権力は神から与えられたもので、父が家族を支配するように、王は国民を支配する」と主張しました。

ロックはこれに対し、「人間は皆平等に生まれ、誰かが生まれつき支配する権利を持っているわけではない」と反論します。

この論文はやや難解ですが、ロックの思想の土台を築く重要な部分です。

第2論文:市民政府の起源と正当性

ここからが本番で、ロックの政治思想の核心が詰まっています。

自然状態と自然法

ロックはまず、「人間が政府を持たない状態=自然状態」を想定します。

この状態でも、人々は「自然法」に従って生きるとされます。

自然法とは、「他人の生命・自由・財産を侵してはならない」という理性的なルールのこと。

つまり、政府がなくても人間には道徳的な秩序がある、という考えです。

・所有権の起源

ロックは「人間は自分の身体と労働に対して所有権を持つ」と考えました。

たとえば、森の木の実を自分の手で集めたら、それは自分のものになる。

このようにして、自然のものに労働を加えることで「私有財産」が生まれると説きました。

この考え方は、資本主義の理論的な基礎にもなっています。

・社会契約と政府の成立

自然状態では、他人が自分の権利を侵したときに、それを裁く仕組みがありません。

そこで人々は「社会契約」を結び、政府をつくることにします。

政府は、個人の「生命・自由・財産(ロックはこれを“所有”とまとめます)」を守るために存在するのです。

つまり、政府の正当性は「国民の合意」によって生まれるという考え方です。

・立法権と行政権

ロックは、政府の権力を分けることの重要性も説きました。

特に「立法権(法律を作る力)」と「行政権(法律を実行する力)」は分けるべきだと主張します。

これは後の「三権分立」の考え方につながり、モンテスキューやアメリカ合衆国憲法にも影響を与えました。

・政府の限界と抵抗権

ロックの思想で特に重要なのが「抵抗権」です。

もし政府が国民の権利を侵害した場合、国民はその政府に抵抗し、新しい政府をつくる権利があるとされます。

これは、後のアメリカ独立戦争やフランス革命の思想的な支えとなりました。

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まとめ

『統治二論』は、単なる古い本ではなく、現代の民主主義や人権の考え方の土台を築いた重要な著作です。

ロックは「人間は生まれながらにして自由であり、政府はその自由を守るために存在する」と説きました。この考え方は、今の私たちの社会にも深く根づいています。

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