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『リヴァイアサン』

史料集
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概要

『リヴァイアサン』は、17世紀イギリスの哲学者ホッブズが1651年に発表した政治哲学の名著です。

タイトルの「リヴァイアサン」とは、旧約聖書に登場する巨大な海の怪物の名前で、ホッブズはこの怪物を「国家」の象徴として描きました。

この本の目的は、「なぜ人々は国家に従うのか?」「国家はどのようにして正当性を持つのか?」という問いに答えることでした。

ホッブズは、人間の本性と社会の成り立ちを深く掘り下げ、国家の必要性を論じました。

歴史的背景

『リヴァイアサン』が書かれた17世紀のイギリスは、まさに激動の時代でした。

特に重要なのが「ピューリタン革命」です。

王党派(チャールズ1世)と議会派(クロムウェルら)が激しく対立し、最終的に王が処刑され、共和制が成立します。

この混乱の中で、ホッブズは「秩序のない社会は恐ろしい」と痛感しました。

ホッブズはこの混乱を目の当たりにし、「人間は放っておくと争い合う存在だ」と考え、強い権力を持つ国家の必要性を説いたのです。

文化的背景

17世紀は、宗教と科学がせめぎ合う時代でもありました。

・宗教改革と宗教戦争

カトリックとプロテスタントの対立がヨーロッパ全体に広がり、信仰が政治と深く結びついていました。

・科学革命の時代

ガリレオやデカルトなどが登場し、自然科学や合理的思考が広まりつつありました。

ホッブズもまた、数学や自然科学の影響を受けており、人間や社会を「機械」として捉える視点を持っていました。

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主な登場人物

『リヴァイアサン』は哲学書なので、物語の登場人物のようなキャラクターは出てきませんが、以下のような「概念的な登場人物」が重要です。

自然状態の人間:国家が存在しない状態での人間。ホッブズは「万人の万人に対する闘争」の中にあると描写します。

リヴァイアサン(国家):すべての個人が契約によって権利を委ねた、強大な主権者。秩序と平和を守る存在です。

主権者(ソブリン):国家の権力を持つ存在。君主でも議会でもよいが、絶対的な権力を持つ必要があるとされます。

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著書の内容

『リヴァイアサン』は全4部構成で、それぞれが人間・国家・宗教・歴史について論じています。

以下に各部の内容をわかりやすく紹介します。

第1部「人間について」

ホッブズはまず、人間の本性を分析します。

・人間は感覚によって世界を知る存在である。

・欲望や恐れ、快楽と苦痛によって行動する。

・自然状態では、すべての人が自由で平等だが、それゆえに争いが絶えない。

・この状態をホッブズは「万人の万人に対する闘争」と呼び、「人間は人間にとっての狼である」と表現しました。

このような混乱を避けるために、人々は「社会契約」を結び、権力を一つに集中させる必要があると説きます。

第2部「国家について」

ここでは、国家(コモンウェルス)の成立とその正当性が語られます。

・人々は自らの自然権(生き延びるための自由)を主権者に委ねる。

・主権者は絶対的な権力を持ち、法を定め、秩序を守る。

・この主権者こそが「リヴァイアサン」であり、国家は一つの巨大な人工的な人間(人工人間)として描かれます。

・民主制・貴族制・君主制のいずれも可能だが、ホッブズは特に君主制を好みました。

第3部「キリスト教国家について」

この部分では、宗教と国家の関係が論じられます。

・宗教は国家の秩序を乱す可能性があるため、主権者の管理下に置かれるべき。

・聖書の解釈も、国家が統制すべきである。

・教会の権威よりも、国家の法が優先されるべきだと主張します。

これは当時の宗教的権威に対する挑戦でもあり、ホッブズは多くの批判を受けました。

第4部「暗黒の王国について」

最後に、ホッブズは迷信や誤った宗教観が社会に与える悪影響を批判します。

・教会が人々を恐怖で支配することへの警鐘。

・真の宗教とは理性と一致するものであるべき。

・無知や迷信が「暗黒の王国」を生み出すと警告します。

この章は、ホッブズの啓蒙的な思想がよく表れている部分です。

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まとめ

『リヴァイアサン』は、国家とは何か、人間とは何かを深く考えさせてくれる一冊です。

ホッブズは、混乱の時代に「秩序」を守るためには、強い国家が必要だと主張しました。

現代の私たちにとっても、「なぜ法律に従うのか?」「自由と安全はどう両立するのか?」といった問いは重要です。

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