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『ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語』

史料集
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概要

『ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語』は、16世紀フランスの人文学者のラブレーによって書かれた風刺作品です。

巨人の父ガルガンチュアとその息子パンタグリュエルを中心に、奇想天外な冒険と哲学的対話が繰り広げられます。

全5巻からなるこの作品は、笑いと風刺を通じて、教育・宗教・政治・人間の欲望など、当時の社会を鋭く批評しています。

歴史的背景

この物語が書かれたのは、フランスのルネサンスの真っ只中でした。

印刷技術の発展により知識が広まり、宗教改革やヒューマニズム(人文主義)が台頭していた時代です。

ラブレー自身も医師であり学者であり、カトリックとプロテスタントの対立が激化する中で、自由な思想と学問の重要性を訴えました。

物語には、当時の戦争(例:ピクロコリック戦争)や宗教会議(例:トレント公会議)への風刺が織り込まれています。

文化的背景

ラブレーの作品は、イタリアのルネサンスの影響を強く受けています。

人間の身体や欲望、笑いの力を肯定する姿勢は、当時の禁欲的な宗教観に対する挑戦でもありました。

また、物語の中にはユートピア思想が描かれ、自由で教養ある人間の理想像が提示されています。

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主な登場人物

ガルガンチュア:巨人の父。知性と力を兼ね備えた人物。

パンタグリュエル:ガルガンチュアの息子。学問と冒険を愛する巨人。

パニュルジュ:パンタグリュエルの家臣。機知に富み、風刺の中心人物。

ジャン修道士:戦う修道士。ピクロコール王との戦争で活躍。

徳利明神:物語後半で登場する神託の象徴的存在。

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著書の内容

この巻では、ガルガンチュアの誕生から教育、戦争、そして理想郷「テレームの僧院」までが描かれます。

誕生と成長

ガルガンチュアは驚くほど巨大な赤ん坊として生まれ、母の妊娠期間は11か月。

彼の成長は早く、父グラングージエはその知性に感心します。

教育の失敗と再教育

最初の教育では形式主義に陥り、ガルガンチュアは愚かになってしまいます。

新しい家庭教師ポネクリスによって、実践的で人文主義的な教育が施され、彼は再び賢くなります。

ピクロコール戦争

隣国の王ピクロコールがパン屋とのいざこざをきっかけに戦争を仕掛けてきます。

修道士ジャンの奇抜な戦術と勇気により、ガルガンチュア軍は勝利します。

テレームの僧院

ジャンの願いで建てられた理想の僧院。

唯一の規則は「汝の欲するところを行え」。自由と教養を重んじるユートピア思想がここに表れています。

第2巻

ガルガンチュアの息子パンタグリュエルが主人公。彼の学問と冒険が描かれます。

学問の旅

パンタグリュエルはポワチエ、オルレアン、パリで学び、知識を深めます。

パニュルジュとの出会い

奇妙で機知に富んだ男パニュルジュと出会い、彼を家臣にします。

パニュルジュはトルコ人に捕まって火あぶりにされかけた過去を持ちます。

ディプソード人との戦争

ユートピア国に侵入したディプソード人を征伐するため、パンタグリュエルは軍を率いて出陣。

奇抜な戦術と怪力で勝利を収めます。

語り手の冒険

語り手がパンタグリュエルの口の中に入って数か月過ごすという奇想天外な描写も登場します。

第3巻

ここは哲学的な議論が中心となる巻です。

パニュルジュの結婚問題をめぐって、自由意志や運命について深く掘り下げられます。

結婚するべきか否か

パニュルジュは結婚したいが、妻に裏切られるのではと悩みます。

占いや助言の旅

パンタグリュエルとともに、様々な占い師や哲学者を訪ねて助言を求めます。

プラトンの対話篇のような構成で、風刺と哲学が交錯します。

「徳利明神」への旅の準備

最終的に、神託を得るために「徳利明神」を訪ねる航海を決意します。

第4巻

パンタグリュエル一行が「徳利明神」を訪ねて航海に出る冒険譚。

奇妙な島々と出来事

空飛ぶ豚、料理の戦争、海の怪物など、ナンセンスなユーモアが満載。

嵐と怪物との戦い

嵐に遭遇したり、海の怪物を倒したりと、冒険は続きます。

風刺の深まり

ジュネーブの宗教紛争やトレント公会議など、当時の宗教的・政治的問題への風刺が込められています。

第5巻

ラブレーの死後に出版された巻で、真作か偽書か議論がありますが、内容は非常に興味深いです。

鳥の社会と裁判の島

カトリック教会を模した鳥の社会や、裁判ばかりしている弁護士の島など、風刺的な描写が続きます。

気まぐれの女王国

チェスをする女王と生きた人形など、幻想的な場面が展開。

「徳利明神」との出会い

ついに神託を受ける場面では、「トリンク(飲め)」という言葉が発せられます。

パニュルジュはワインの力を信じ、結婚を決意します。

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まとめ

『ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語』は、笑いと風刺を通じて人間の自由、知性、欲望を肯定する壮大な文学作品です。

巨人たちの冒険は、単なる奇想ではなく、ルネサンス期の思想と社会批評が詰まった知的な旅でもあります。

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