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『レ=ミゼラブル』

史料集
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概要

『レ=ミゼラブル(Les Misérables)』は、フランスの作家ヴィクトル=ユゴーによって1862年に発表された長編小説です。

ヴィクトル=ユゴー

タイトルの「レ=ミゼラブル」とは、「悲惨な人々」「虐げられた人々」という意味を持っています。

物語は、一切れのパンを盗んだ罪で19年間も服役した主人公ジャン=ヴァルジャンの人生を中心に展開します。

彼は出所後も社会から差別され続けますが、ある司教との出会いをきっかけに新しい人生を歩もうと決意します。

しかし、彼を執拗に追い続ける警察官ジャヴェール、貧困に苦しむ女性ファンティーヌ、その娘コゼット、革命を志す若者たちとの出会いによって、彼の人生は大きく揺れ動いていきます。

この作品は単なる小説ではありません。

19世紀フランス社会の貧困、犯罪、法律、革命、愛、赦し、人間の尊厳といったテーマを壮大なスケールで描いた社会小説でもあります。

現在ではミュージカルや映画としても世界中で親しまれ、『オペラ座の怪人』『キャッツ』と並ぶ代表的なミュージカル作品の一つとして知られています。

歴史的背景

『レ=ミゼラブル』を理解するためには、19世紀前半のフランス情勢を知る必要があります。

1789年にフランス革命が起こり、絶対王政は崩壊しました。

しかし、その後もフランス社会は安定しませんでした。

革命後にはナポレオンが登場して帝政を築きますが、1815年にワーテルローの戦いで敗北します。

その後は王政復古が行われ、ブルボン朝が復活しました。

しかし、人々の間には、

・自由を求める声

・政治参加を求める声

・社会的不平等への不満

が強く残っていました。

その結果、1830年には七月革命が起こり、さらに1832年には共和主義者たちによる六月暴動が発生します。

実は『レ=ミゼラブル』で有名なバリケードの戦いは、この1832年六月暴動がモデルになっています。

革命と反革命が繰り返される不安定な時代のなかで、多くの市民は貧困に苦しんでいました。

ユゴーはその現実を目の当たりにし、「社会が生み出す不幸」を描こうとしたのです。

文化的背景

『レ・ミゼラブル』が書かれた19世紀は、ロマン主義が大きな影響力を持っていた時代でした。

ロマン主義とは、理性や合理性よりも感情や個人の内面、人間らしさを重視する文化運動です。

ユゴー自身もフランス・ロマン主義を代表する作家でした。

しかし、『レ・ミゼラブル』は単なるロマン主義文学ではありません。

主人公たちの感情や理想を描くだけでなく、

・都市の貧困

・労働者の生活

・女性の社会的弱者としての立場

・犯罪者への偏見

・教育格差

といった現実の社会問題も克明に描いています。

そのため、この作品はロマン主義文学であると同時に、後の写実主義や社会派文学へつながる橋渡し的な作品とも評価されています。

また、ユゴーは「人間は変われる」「社会は弱者を見捨ててはならない」という強い人道主義思想を持っていました。

この思想が作品全体を貫いています。

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主な登場人物

ジャン=ヴァルジャン・・・本作の主人公。姉の子どもたちを養うためにパンを盗み、19年間投獄されます。出所後も社会から拒絶されますが、司教の慈悲によって更生を決意します。誠実で自己犠牲的な人物へと成長していきます。

ジャヴェール・・・警察官。法律こそ絶対であると信じています。犯罪者は永遠に犯罪者だと考え、ジャン=ヴァルジャンを執念深く追跡します。

ファンティーヌ・・・貧しい女性労働者。娘コゼットを育てるために苦しい生活を送り、やがて社会の犠牲者となります。

コゼット・・・ファンティーヌの娘。幼少期は虐待されながら育ちますが、ジャン=ヴァルジャンに救われます。

マリユス・・・共和主義思想を持つ青年。コゼットと恋に落ち、革命運動にも参加します。

テナルディエ夫妻・・・宿屋の主人夫婦。コゼットを預かりますが、実際には虐待しながら養育費を搾取します。作品を代表する悪役です。

アンジョルラス・・・学生革命家のリーダー。自由と共和政の実現を目指して戦います。

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著書の内容

第一部:ファンティーヌ

物語は出所したジャン=ヴァルジャンから始まります。

元囚人という理由だけで宿泊先も仕事も得られず、社会から拒絶され続けます。

そんな中、ミリエル司教だけが彼を温かく迎え入れます。

しかしヴァルジャンは銀食器を盗んで逃亡します。

捕まった彼を前に、司教は「私が与えたものです」と警察に告げます。

さらに銀の燭台まで渡し、「正しい人間になりなさい」と諭します。

この出来事がヴァルジャンの人生を根本から変えます。

一方、ファンティーヌは娘コゼットを育てるために苦労を重ねますが、職を失い、髪や歯を売り、最後には売春にまで追い込まれます。

彼女は病に倒れ、コゼットを託して亡くなります。

ユゴーはここで、貧困が人間を追い詰める社会の残酷さを描いています。

第二部:コゼット

ジャン=ヴァルジャンはファンティーヌとの約束を果たすため、コゼットを引き取ります。

当時のコゼットはテナルディエ夫妻から召使いのように扱われていました。

クリスマスの夜、重い水桶を抱えて歩く少女を見つけたヴァルジャンは、彼女を救い出します。

その後、二人はパリで静かに暮らします。

しかしジャヴェールの追跡は続いていました。

この部分では、親子のような愛情と救済が丁寧に描かれています。

第三部:マリユス

成長したコゼットは青年マリユスと出会い、恋に落ちます。

一方マリユスは共和主義の若者たちと交流し、政治運動に参加していきます。

この頃のフランスでは王政への不満が高まり、若者たちは自由な国家の実現を夢見ていました。

恋愛物語と政治運動が同時進行で描かれ、物語は新たな展開へ進みます。

第四部:プリュメ街の牧歌とサン・ドニ街の叙事詩

1832年六月暴動が勃発します。

共和主義者の学生たちはバリケードを築き、政府軍に抵抗します。

アンジョルラスや仲間たちは理想のために命を懸けて戦いますが、結局は圧倒的な軍事力の前に敗北します。

マリユスも重傷を負います。

そこでジャン=ヴァルジャンは命を懸けて彼を救出します。

地下下水道を通って運び出す場面は作品最大の名場面の一つです。

ここでは革命の理想と現実、若者たちの情熱と犠牲が描かれています。

第五部:ジャン=ヴァルジャン

ヴァルジャンは革命後、マリユスとコゼットの結婚を見届けます。

そして自らの過去を告白します。

真実を知ったマリユスは一時距離を置きますが、やがてヴァルジャンの高潔さを理解します。

ジャヴェールはヴァルジャンに命を救われたことで、「法律」と「人間としての良心」の間で苦しみます。

彼は最後まで答えを見つけることができず、自ら命を絶ちます。

物語の最後、ヴァルジャンは静かに人生を終えます。

彼の手元には、かつて司教から贈られた銀の燭台が残されていました。

赦しによって人生が変わったことを象徴する感動的な結末です。

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まとめ

『レ=ミゼラブル』は、一人の元囚人ジャン=ヴァルジャンの人生を描いた物語であると同時に、19世紀フランス社会そのものを描いた歴史小説でもあります。

この作品を通して私たちは、

・貧困はなぜ生まれるのか

・法律は何のためにあるのか

・人は本当に変わることができるのか

・社会は弱者にどう向き合うべきか

という普遍的な問いに向き合うことになります。

フランス革命後の混乱、1832年六月暴動、都市の貧困といった歴史的事実を背景に、人間の尊厳と希望を描いた『レ・ミゼラブル』は、今なお世界中で読み継がれる名作です。

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